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次の物件は、不動産屋の隣町との境にあり、ちょうど駅と駅の間くらいの静かな住宅街の中にあった。貰った資料によると、築五年の十階建てマンションの七階1Kの部屋で、バストイレ別、システムキッチン、オートロック、宅配ボックス有り、モニター付きインターホン付きという充実した設備で、全く文句の付けようがない部屋であった。石造りの玄関は高級感を溢れさせ、住民用の鍵でオートロックを開錠し、白の壁と灰色の床というモノトーンの綺麗な廊下を進む。
合鍵作成不可のディンプルキーであることを説明しながら、不動産屋は七階の突き当りにある角部屋のドアを開ける。
玄関は靴置き場が設置されていて、広々としている。靴を脱ぎ部屋に上がると、玄関を入ってすぐのところにあるダイニングには二口のIHコンロと広々とした流しのシステムキッチン、充分な広さの冷蔵庫を置くスペースもあった。ダイニングと居間の間のドアを開くと、光が充満した明るいフローリングの部屋が広がっていた。
「クローゼットは一畳近く取ってありまして広々使えますし、こちらの部屋は南向きでベランダも広々一畳ございます。エアコン、浴室乾燥機、一人暮らしの部屋では珍しい追い炊き機能もついており、部屋の広さ設備ともにこれ以上ない物件だと思います」
自信満々の不動産屋の台詞に、俺も同意する。こんな物件がよく残っていたものだと思う。前の部屋の人が、急遽転勤にでもなって部屋が空いてしまったのだろうか。俺が秀仁と同じく部屋探しをしていた時にこんな部屋を見つけたら喜んで即契約していただろう。
「秀仁、この部屋凄くいいじゃないか。防音もしっかりしていそうだし、設備にも広さにも文句ないだろう?」
無言のままガラガラとベランダの窓を開け、外に出る。俺は溜息を吐いて一緒に外に出てみると、目の前に高いビルも無いし、住宅街が見渡せる良い景色である。
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