違和感

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 ――秀仁はどうしているだろう?  次に考えたのはそれだった。もう俺の家に戻っているかも。急いで家に帰りたい衝動を抑えて、俺は火照った体を沈めようとバスルームに向かう。見るとバスに溜めていた湯が溢れていて、慌てて止める。  一つ溜息を吐き、シャワーヘッドを持ち頭上に向け冷水を出す。身体が一気に冷えていくのが分かる。昂ぶった気持ちも、次第に収まっていく。  浴室から出て質感のいい柔らかいバスタオルで素早く身体と頭を拭いて、着てきた服に着替える。しっとりと濡れた髪と拭ききれていなかった関節部分の水滴で肌にシャツが引っ付いていて不快だったが、そんなことよりも家路を急ぐ方が大事で、鞄とテーブルの上のカードキーを引っ掴んで部屋を飛び出した。  一階にエレベーターで降り、受付でチェックアウトの手続きをする。先程チェックインしたばかりの客が早々に退散するのを、受付の若い男は訝しげな様子で鍵を受け取っていた。  ホテルから出て駅に向かって走る。渋滞する八時代では、タクシーよりも電車の方が早い。走っている最中、いい歳した男が全力疾走しているせいか、人の視線を集めていた。  交通ICカードで改札を通り過ぎ、丁度来た電車に乗り込む。ホテル近くの駅から最寄駅まで、十数分。長く感じた。  いつもの帰り道を走り抜ける。昨日も走っていたなあと思う。理由は「秀仁」に違いないけれど、今とは感情に大きな違いがあった。
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