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「それで、申し訳ないんだけど、休日で構わないから家探しを手伝ってやってくれないかな。東京住みの親戚なんて城君しかいないし、そっちは電車とか複雑だっていうから、あのぼうっとした子が一人で家なんて探せないと思うんだよ」
ほら見ろ言ったことか、と心の中のもう一人の俺が毒吐く。いやしかし、よく考えれば短期間でさっさと部屋を探してやれば、長いこと一緒に行動することもないわけで、目ぼしい部屋を奴が来る前にネットで探しておけば、即日決定してさよならできる可能性もある。それに、何と言っても大好きな勝仁おじさんの頼みを拒否することなどできるはずもなかった。
「分かりました。秀仁君のことは任せてください」
「本当かい? 助かるよ。今度何か御礼をしないとね」
嬉しそうな勝仁おじさんの声が聞こえ嬉しくなると同時に、「御礼なら勝仁さんの太くて硬い肉棒で構いません」と言いたくなる衝動を抑える。
「ああ、そうだ。実は秀仁、今朝こっちを発ったんだよ。早い方が良いと言って」
確かに三月のこの時期、四月からの上京に合わせて部屋を借りる人が多く、不動産会社が良物件を掲載すると、数時間ですぐ埋まってしまうので、一日でも早い方がいいと思う。しかし、明日明後日がちょうど土日。早速あいつと会わなければならないのかと思うと途端気落ちする。
「あと秀仁が『城の家に泊まる』と言って出ていってね。宿賃渡してあるから、ホテルに泊まってると思うんだけど。もしかして、お邪魔していないかな?」
――なんだって?
とんでもなく嫌な予感がする。予想は絶対当たって欲しくない、絶対嫌だ、無理だ。
「ま、まだ帰宅途中なので、分かりましたら連絡します」
「仕事帰りにすまなかったね。秀仁来ていたら追い出して構わないから」
そんなことできるわけがない。俺の話は右から左、まともに話ができない相手をどうやって追い出すというんだろう。それに腐っても勝仁おじさんの一人息子じゃないか。顔が似過ぎて悪態がつきづらいのだ。
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