部屋探し

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部屋探し

 ゆさ、ゆさ、と誰かが俺の身体を揺すっている。 「……城、起きて」  誰の声だ、と一瞬分からなかったが、朝だ、と思った瞬間飛び起きた。と、同時に額に激痛が走る。 「いってぇ……」  ふと見るとベッドの脇で蹲っている男が居る。俺を起こそうとしていたら、起きた拍子に頭突きされたのだろう。 「だ、大丈夫か、秀仁……」  顔を押さえていると思ったら、手の間から鼻血がぼたぼたと床に落ちていた。俺は慌ててベッド脇のテーブルからティッシュを大量に取り出すと、秀仁の顔を拭き鼻に栓をする。 「悪い、わざとじゃないんだ、許してくれ」  秀仁は無言で余ったティッシュで床の血を拭き取っている。 「……部屋、いつ見に行くの」  言われて気付く。外はもうかなり明るい。慌てて枕元の携帯の表示を見ると九時だった。 「わ、悪い! 今すぐ準備して行こう!」 「……向こうで待ってる」  と、既に着替えて鞄を持った状態の秀仁が寝室を出ていった。鼻を痛そうに押さえながら。さすがに怒っただろうか。  早々と着替えて、昨日のファイルを手にリビングに行くと、テーブルの上にコーヒーとマーガリンの塗られたトーストが出されていた。 「俺は急いでないから、食べてから行こう」 「……悪いな」  勝仁おじさんの教育の賜物か、少しは気を遣えるようになったらしい。俺はソファに腰を下ろすと有難くトーストとコーヒーを頂く。 「これ……何?」  気付くと横に立っていた秀仁が、俺のファイルを手に取っていた。 「今のうちに見ておいてくれ。昨日目ぼしい物件調べておいたんだ。気に入ったのがあったら言ってくれよ。そこの不動産会社から行くから」  黙ったまま、秀仁は俺の隣に腰掛けると、黙々と印刷した物件を見ている。こうして間近で見ると、やはり勝仁おじさんに似て綺麗な顔をしている、と思う。若い男に興味がないとは言え、絵画や彫刻の美しい若者を愛でるような感覚は俺にもあるわけで、そういう観点で彼の横顔を見詰めていた。
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