五章

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 9月の最終週、知晴ちゃんが東京に来てくれるというので会う約束をしていた。本当はお盆明けの予定だったけど知晴ちゃんのサークルの合宿の関係でこうなったのだ。  夏休み前に連絡が来た時はそこそこ残念だったのだけど、こっちはこっちで大騒ぎだったからかえってちょうど良かったと言うべきだろうか。今だって別に落ち着いてはいないけど、気が滅入りに滅入っていたから顔を見て少しでも忘れたい。  バイトの早上がりの日、自転車を走らせていると、大きなショッピングモールのネオンが目に入る。夕方だけど空はまだ明るい。私は腕時計をチラリと見て、曲がろうと思った道を真っ直ぐに進んだ。
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