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みっちりとした駐輪場のようやく見つかった隙間に自転車を停め、2、3枚イベントポスターが貼られた自動ドアをくぐる。
パイ菓子の甘い香りもポーズを取ったマネキンも、地元のショッピングモールと比べ洗練されてお洒落な気がした。最初にフロアマップを手に取り一階の店先をぐるりと一周してみる。どれも高価なのかと思ったら案外手頃な価格帯のショップもあり、東京の誰もが富裕じゃあるまいしと思い直す。
それからマップを頼りに数軒回ったけれど、アパレルショップはどこも大抵「新作入荷」の文字が並んでいた。まだ暑いから夏から秋中旬まで着れそうなものをと思ったが、もうニットやコートが売場の大半を占めていて少しガッカリしてしまう。
隅に追いやられた在庫処分コーナーを見つけ出し、70%割引のワンピースを手に取った。丈が足首までの黒とグレーのストライプの落ち着いた、着やすそうなデザインをしている。
「蘭ちゃんじゃん」
近くの姿見で身体に合わせていると後ろから急に二の腕を軽く叩かれた。鏡に映る薄い茶髪が知り合いだとわかり、悲鳴を呑み込んだ私は視線と声を凍らせる。
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