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彼女は「もう仕事してたからさー」と言いながら私が最初に選んだワンピースを勝手に戻す。
「キャバなんだけど、最近ようやく数字出るよーになってさ。楽しーよ。蘭ちゃんはキライそうな仕事だけど」
「絶対無理」
「だよね、ははっ! 知ってた!」
即答すると愉快そうに笑い飛ばされた。
「だって接待でセックスとかするんでしょ」
「キャバはしないよー。蘭ちゃん偏見スゴいねー」
美来奈の言い方が少し硬くなる。確かに、ろくに知らないことを好き勝手に話すのは失礼だ。
「そう、それは失礼でした」
「ま、プライベートではけっこう寝てるけどさ」
自分のさほど威張ることでもない恋愛事情を明け透けにして、何のつもりなのかと思っていたら、彼女は私の方にくるりと顔を向ける。
「いい男の子だよね、桐一くんて。頭カチンコチンかと思ってたけど」
笑顔から敵意が剥き出している。私の表情の揺れを愉快そうに眺めているのが不愉快だ。
「だから?」
「本気出そうかなって思って。アタシ多分桐一くん落とせるよ」
おそらく眉しか描いていない顔に相反する自信に溢れた表情、声に虫唾が走った。
「余程の根拠でもあるの?」
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