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「実の妹を『女』だと思っているやつこれまで会ったことがあるか……? 気味が悪いだろ……」
思っていた言葉と違う。桐一は乱暴に私の顔を掴み爪を立てた。心底恨めしそうに。
「……若い頃の母さんの写真にそっくりだ……血が繋がってないなんてあり得ない……!」
桐一が母親から受け継いだ奥二重を伏せた。まるで、同じ目を持つ私を見るのを恐れているかのように。
「お前知ってるか? 俺はお前をずっと抱きたいと思ってたんだぜ? お前自分の兄に性的な対象にされてるんだぞ……吐き気がするだろ……」
今まで経験したことがないくらい、気持ちが高揚した。きっと今の私は欲剥き出しの顔をしてるんだろう。
「じゃあ抱いて」
桐一が「常軌を逸している」とでも言いたげに顔を強張らせて私を見た。
「何を言っているんだ……?」
正気の沙汰ではないと思うのなら、それで構わない。
「私、ずっと前から桐一に抱かれたいと思ってた。吐き気がする? 桐一が今言ったことが嘘だったら私はもう……立ち直れない」
今引き退ったらもう手に入らない、さっきまで泣いていたのも忘れ私は必死だった。
やがて、桐一が私の唇を指でなぞる。私が頷くと、桐一の顔がゆらりと近づいてきた。目を閉じた後、乾いた皮膚が私の唇に蓋をする。
身体が震えた。心が満たされたって、多分こういうことだ。
もう、私たちは戻れない。
「……帰ろう」
桐一は私の手を躊躇いなく引く。絡んだ指は互いの汗で湿っていたけど、絶対に離さなかった。
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