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「軽谷さん!」
僅か十分の休み時間にたまたま教室を出て廊下を歩いていると呼び止められた。
「よかった。なかなか話しかけるタイミングなくてさ」
気さくな笑顔を浮かべている彼は桐一より頭一つ分くらい背が高い。丸坊主だが頭の形が良いから精悍さを助長させている。
「私に何か用事?」
隣のクラスだし全く接点がない。聞いてみると彼は少し顔を紅潮させてきた。
「あ、あのさ、俺、前からちょっと軽谷さんのこと気になっててさ」
「私が……?」
喋ったこともないのに。
「突然ごめん! 俺のことあまり知らないかもだけど、どうしても言いたくて!」
少女漫画から抜け出て来たように爽やかなのに、よりによって割と根暗な私に何を見出したのだろうか。
でも、悪い話じゃないかもしれない。私が桐一を忘れてしまえば、桐一が何をしても気にならなくなるし。
「少しは知ってるよ、バスケ部のスタメンの人でしょう?」
彼の真っ直ぐな瞳が輝いた。
「知ってるの?!」
突然、がしっと腕を掴まれる。
「あ……っ」
驚きのあまり声を漏らした瞬間だった。
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