二章

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二章

「ねぇ、アンタ達昨日二人揃って何でご飯食べてないの?」 父の単身赴任先から帰って来た母が冷蔵庫を開けて聞いてくる。何となくテレビを観ていた私は怪訝な顔の母を恐る恐る覗いてみた。 「えっ……なんでって……別に」 「(らん)がお惣菜買ってきたんでしょ? 好きなもの自分で買ったんじゃないの?」 確かに昨日一日、結局何も食べてない。説明できる筈がない。昨夜何があったのかなんて。 「あー……ちょっと……食欲無くなっちゃって。夏バテかな」 信じてくれるだろうか。 「俺、帰りに牛丼食べて帰ったし」 1リットルのペットボトルに三分の一程残っていたオレンジジュースを飲みきった桐一はいい捨てるようにして自分の部屋に戻る。 「……あ、そ」 母は惣菜の唐揚げを大皿に移して電子レンジに入れた。 「……気を付けなさいよ。あと、野菜もちゃんと食べなさい」 母はもう自室のドアを閉めているだろう桐一に向かって「桐一! 飲んだらちゃんと流し台まで持って行きなさい!」と怒鳴る。どこにでもいる、普通の母親の小言だ。 ……ごめんね。
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