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やはり、ここは無難にシアトルコーヒーなのか。
わからないから、とりあえず全部買って上に行くまでに、また考えよう。
そう小賢しく考えた私は、抹茶ラテとフレッシュオレンジジュースの両方を手にしてレジに向かった。
その途中で、見たことがある人が視界に入ってきた気がして私は首を右方向に動かした。
「あっ!」
棚を挟んだ向こう側に、なんと旬先生がいたのだ。
「ちょ、ちょっと、先生。どうしてここに? 私を見張りに来たんですか?」
急いで棚の向こうへ周り、旬先生の顔を窺う。
「見張り?」
なぜか、少しキョトンとして私を見る旬先生。
「それとも他に買い物があったんですか?」
旬先生が手にしている週刊雑誌を見おろした。
「ああ、雑誌ですか。電話かラインでもしてくだされば、ついでに買っていきますよ……ん、そうか、私の電話もラインもまだ知らないんでしたね、すいません」
「うん。また他に用があると困るから、そうだなぁ、とりあえずアドレスや何かを今、教えておいてもらえる?」
ズボンのポケットからスマホを取り出した旬先生。
両方の手に持っていたドリンクをどうしようかと迷っていたら、近くに置いてあった小さな買い物カゴを取ってくれた。
「はい、これ使って」
カゴを受けとり、中にドリンクを入れ腕にカゴをぶら下げてから、慌ててカゴを後ろに隠した。
「あ、どうも。えっと、先生、こ、これはどちらも買うとか言う小賢しい手を使っている訳ではなくて……まだ迷っているだけで……最終的には1つに絞りますので、ご安心を」
焦る私に向かって
「大丈夫、僕はキミを信じてるからね」
本当に優しく微笑みながら、私の頭に手を乗せてポンポンとしてくれた旬先生。
イケメンな笑顔だ。
いや、初めからイケメンだから、どんな顔をしてもイケメンなので、仮にムッとしていても『イケメンな仏頂面』だし仮に泣いていても『イケメンな泣き顔』だ。
旬先生って、もしかしてツンデレ?
クールにみせておいて、後からあま〜く接するとみたいな手法だろうか。
意外すぎる旬先生の態度に、私は驚いて目をパチパチさせていた。
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