案件1、24時間以内に惚れてしまうという予言

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「失礼致します、先生!先生が欲しているものを買って来ましたって……え!」 旬先生のオフィスに戻った私は、思わず後ずさりして壁に手をついていた。 「先生が……2人……な、何これ、分身、それとも幽体離脱?」 目の前に信じられない光景が広がっていた。 デスクに向かう椅子に座っている旬先生。デスクの角に寄りかかり、私を見ている旬先生。 旬先生が2人いるのだ。 「なんか凄く驚いてるみたいだね、彼女」 立っている方の旬先生が、座っている旬先生に言った。 「こんなに驚く人間は珍しいな」 まぼろしなのか、幻想なのかわからないが、目の前の旬先生同士が2人で会話をキャッチボールしていた。 「やだ、話してる」 「会話くらいするだろ、普通に。キミは双子がそんなに珍しいのか? 見たことがないのか?」 デスクに座っている方の旬先生が眉間に皺を刻んだ。 「双子? え、先生は双子なんですか?」 今朝受付で栄先生は2人いるとは聞いたが、まさか双子だとは思わなかった。 「ああ、僕は、兄の栄 潤(さかえ じゅん)だよ」 デスクに寄りかかり立っていた方が兄の潤さんらしい。潤さんは、私の方へ歩いてくると右手を差し出した。 「よろしくね、えっと、キミ、名前は?」 「よろしくお願いします。内藤 涼です」 手を出して潤さんと握手をする。 「可愛いね、涼ちゃんか。まだ、20代かな? 良いなぁ旬は、可愛いパラリーガルで。うちの安元さんと交換しない?」 私と握手をしたまま、旬先生を見る潤さん。 「あの、潤さんも弁護士なんですか?」 「ん、見てよ。このバッジ」 潤さんは弁護士としての証、弁護士記章(弁護士バッジ)を付けていた。 憧れの弁護士記章。ひまわりの真ん中に天秤が彫られたバッジだ。 バッジが偽物でなければ間違いなく潤さんも弁護士というわけだ。
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