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まだ握手した手を離してくれない潤先生。
「おい、潤。やたらと女には手を出すな。面倒なことはもう沢山だ。この前もおまえと間違えられてストーカー女に刺されそうになったばかりだ。迷惑かけるな」
椅子に座ったまま、右手でつまんだペンをコツコツとイライラした感じでデスクに打ち付けている。
なるほど、双子だと間違えられた場合、危険な目にも合う確立も倍に増えるわけか。それにしても、驚いた。
あまりにもそっくりだ。
見分けるのは、きっと肉親でも難しいに違いない。
「先生は双子でしたか。ああ、びっくりした。え、でも…待って! もしかして、さっき私がコンビニで連絡先を教えた人って……」
なんだか嫌な予感がしていた。
「ビンゴ〜!さっきのは俺だよ、涼ちゃん。わざわざ連絡先を教えてくれてありがとう。今度、食事に誘うからね〜、じゃ!」
そう言って、ようやく私の手を離し雑誌を掲げながら扉から出て行く潤さん。
雑誌!
コンビニで見た雑誌を持っている!
私ってば、教えなくていい人に連絡先なんか気軽に教えてたりして。あまりにも危機管理不足。
それに、非常にまずい。
さっきのコンビニにいたのが、旬先生じゃないとすれば……。
お茶を買っていたのは、潤先生な訳で。
つまり、旬先生が無類のお茶好きっていう仮説は見事に崩れたわけだ。
私は手にしていたコンビニのビニール袋を見て、さあっと血の気がひいて行くのを感じていた。
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