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「そして、最後の勘」
私ったら、何見惚れてるんだろ。
しっかりしなきゃ。
これ以上、視線を合わせているのは危険だと判断し私は強い意志を持ち視線を下の方へ向けた。
デスクに軽く腰掛けた旬先生。
「本来は、勘なんかに頼るべきじゃない。だが、キミは勘に頼ったと正直に白状し、うなだれている。私は、その姿が見たかったんだ」
下を向いたのは、うなだれていたばかりでもない。旬先生と視線を合わせているのが無理だったからだが、今は、そこをあえてバラさない方が良さそうだ。
「えっと…それは」
「つまり、私は素直に白状する姿勢を見たかった。正直な人間としか私は仕事出来ない。パラリーガルは、私の仕事を補佐する重要な役割を担っている。その人間が嘘つきでは、たまらないからな」
「あの、じゃあ?」
この言葉からすると、私は旬先生の試験に合格したのだろうか。
すぐ近い距離にいる旬先生を見あげると旬先生は私をジッ見ていた。
「キミは、私のパラリーガルとして適任だ」
旬先生が二カッと笑う。
綺麗な形に大きく開いた口。そこから見える白くて並びのいい歯。
ズキュンッ!
『私のパラリーガル』だって。
撃たれた。今、確実に私は何かに撃たれてしまった。
なんてことだろう。
私は、なんて軽薄な女なんだろう。
彼氏がいる身でありながら、なんて尻軽!
いけない、いけない。旬先生は、やたらカッコいい外見を持ち合わせ、私的にドストライクな笑顔を見せるツンデレ男なだけだ。
どうか私の心よ、そうだと言ってくれ。
頼むから。
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