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「あいにくですが、私は気軽な相談には乗らない主義です。依頼人とは、真剣に向き合いたいので。それと、私としたことが忘れていましたが」
受付嬢Aに絡まれた腕を抜いて、旬先生は、私の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。
「新しいパラリーガル、この内藤くんの歓迎会を催すので今夜は時間がありません。あしからず」
ポーン
エレベーターが来て、扉が開いた。
「では、失礼」
私の腕を引っ張りながら、エレベーターに乗り込んだ旬先生。
エレベーターに乗ってから扉方向を向くと呆気にとられている表情の受付嬢Aが閉まっていくドアの間に見えていた。
美人でも、あんなに間が抜けた顔するんだぁと妙な感心をした。
「あの、旬先生?断って良かったんですか?」
周りの人に迷惑にならないよう小さい声で聞いてみた。
「何が」
「美人からの相談なのに…」
私の腕から手を離した旬先生は、眉間にしわを寄せて私を見おろした。
「美人? どこが」
「え、美人ですよね、彼女」
「あれは、化粧という最新技術を最大限駆使して出来上がったトリックだ。そんなトリックに騙されるな。それに以前から、眉間から鼻にかけての不自然な鼻の高さが気になって仕方がなかった」
エレベーターが5階に着くと旬先生について私も降りた。
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