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恐らく大理石だと思われる床は、まるで鏡のようにピカピカに磨かれていた。
ホテルのエントランスのような受付に行き、笑顔だが、蝋人形みたいな印象のある美人受付嬢の1人に名前を伝える。
「今日から、栄(さかえ)先生の下で働かせてもらう予定の内藤 涼(ないとう りょう)です」
頭をバサッと下げてみせる。
顔を上げると、受付嬢の2人は顔を見合わせていた。
「困りましたわ。栄先生というのは、どちらの栄先生かしら?」
人差し指を顎に当てて考えるポーズの受付嬢A。
「え、どちらのって2人いらっしゃるんですか?」
「ええ、そうですね、では、先生の下のお名前は聞いてらっしゃいます?」
コレは、やばいっ!
まさか下の名前まで聞かれるとは思わなくて、覚えてきていない。少し天井を見上げ考えてみた。思い出して、涼! なんとか思い出すのよ。
え〜っと、確か漢字1文字の名前だったはず。それに、なんだか新鮮そうな名前だった。
頭を悩ませて、うーんうーんと唸りつつ、漢字1文字で済む名前を考えてみる。ん〜ポクポクポクポクッチーン!急にひらめいた。
「そうだ、えっと、確か……」
バッグからスマホを取り出して、スケジュールのアプリを開く。
ひらめいたのは、名前では無くて名前を探す方法だった。あった、コレコレ。本日の予定の欄に【栄 旬(さかえ しゅん)先生 9時】とスケジュール登録されていた。ちゃんと登録してたよ、良かったぁ。安心して胸をなでおろす。
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