930人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
旬先生のオフィスに入ったはいいが、いつまでも扉の前に立たされていた。
「女か」
そう呟いたきり、外の景色を広く見渡せるように椅子を外側に向け座ったままの旬先生。
「あのぅ」
「しっ! わかっているから、あと2分黙っててくれ」
「あの」
同じ場所にずっと立たされているのは、25歳といえどもかなりしんどい。
「今、考えている。新しく来たパラリーガルが女 だというのは、きちんと聞かなかった私のせいなのか、もしくは、言わなかった音羽くんのせいなのか、それとも…紛らわしいキミの名前のせいなのか」
「名前のせい? そんなのひどいですよ。私の名前のせいなんて!」
確かに私の名前は紛らわしい。内藤 涼(ないとう りょう)。一見すると男みたいな名前ではある。そのせいで今までも随分苦労してきた。
「旬先生は、パラリーガルの性別にどうしてこだわるんですか?」
パラリーガルが女だと、どうしてダメなのかを知りたかった。完全に女性蔑視だ。旬先生は、腕時計を見ると
「2分たった」
そう言ってクルリと椅子を回して私を見た。
「教えよう。第一に女は嘘をつく。第二に女は飽きっぽい。第三に女は信用出来ない。第四に女は仕事に私情を挟んでくる」
旬先生は、鋭い目つきで私をじっと見る。ため息をついてから、続けた。
「第五に女は必ず俺に惚れてしまう」
「はい?」
今、なんて?
最初のコメントを投稿しよう!