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「う〜ん。どこかが悪いということじゃないんだ。簡単に言うと…旬の優れた能力の1つがたまに顔を出すんだ」
「優れた能力ですか?」
「そう、旬が今関わってる案件は、なんだかわかる?」
「はい、ストーカー被害に対する依頼です」
「それだ。おそらく旬は、その依頼人か加害者に会ったのかな?」
「両方に会いました」
「そっか、やっぱりね……」
潤先生は納得したように頷いた。
「旬は別の真実を目にしたんじゃないかな」
私を見て軽く微笑んだ潤先生。
「別の……真実ですか?」
一体何のことだろう。
「うん、ここから先は、旬の目が覚めたら聞いてみて」
潤先生は毛布をもう一度掴んで旬先生の肩が見えないようにかけ直すと、私の肩をポンと叩いた。
「午後から旬が担当する仕事で変われるものは、うまく僕が処理しておくからさ、旬のこと涼ちゃんに頼んでいい?」
そう言って潤先生は扉の方へ歩いていく。
「はい」
「良かった。旬も目覚めた時に僕なんかよりも、きっと可愛い女の子がそばにいた方が嬉しいと思うからさ。じゃ、よろしく」
扉から潤先生が出て行き扉が閉まると私は、旬先生と部屋に2人きりになっていた。
潤先生ったら私を『可愛い女の子』だって。
くぅ〜、イケメンに言われるとお世辞だとしても嬉しくなってしまう。
浮かれながら旬先生の綺麗な顔を眺めて、大きなため息をついた。
それにしても、綺麗な肌に長〜いまつ毛だ。美しく通った鼻筋。唇の形ったら、何コレ、完全にこの顔に合うようにして描かれた絵みたいに綺麗だ。
こんな綺麗な人が目覚めた時に見たい顔ってどんな顔だろ。
平凡な顔をした私がいたって、旬先生は、きっと面白くも嬉しくないだろうと思う。
旬先生にとって私は、今日会ったばかりの平凡なパラリーガルってだけだから。
それにしても、さっき潤先生が言っていた『別の真実』って何のことだろう。
「ん〜〜」
小さく唸った旬先生。眉間に深い溝を刻んでいる。しかめっ面さえ鑑賞に値するから羨ましい。
うなされてるのかな?
あまりにも深い眉間の溝が気になって、急いでタオルを冷たい水に浸してしぼってくると旬先生の額にゆっくり乗せた。
「冷たっ」
冷た過ぎたのか旬先生が急に目を覚まして、額にタオルを乗せた私の手をガシッと掴んだ。
「ぅひっ!」
まるで映画の中によく見る、突如ゾンビに出会って『オーマイガー』と一言だけいうチョイ役みたいに、派手に驚いて尻もちをついた私。
手首は旬先生に掴まれたまま、心の中で『オーマイガー』と叫んでいた。
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