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「はい、もちろんです。私は調べものをしてきます」
「ああ、わかった。資料室を使うといい。資料室の場所は、エレベーターの近くだ」
「わかりました、ありがとうございます」
私の返事を聞くと腕を目を隠すように乗せ、ソファに寝転ぶ旬先生を見た。
体調がまだ悪いみたいね。
窓の方へ行きブランドを閉めてドアから出る前に電気のスイッチを押す。
「内藤くん」
呼ばれて少しびっくりしながら、薄暗くなった部屋の中で寝転ぶ旬先生を振り返る。
「はい。何か必要なものでもありますか?」
顔を上げて、こちらを向いている旬先生。
「いや、16時50分になったら戻ってきてくれ」
さっき言っていた約束の時間なのだろう。よほど大事な約束なのだろうか?
体調が悪くても断れないVIPな顧客なのだろうか?この法律事務所なら、VIPな顧客がわんさかいそうだ。
旬先生は子供じゃないのだし、音羽先輩にも大丈夫だと応えていたのだ。新入りの私がとやかく注意することではないだろう。
でも、やっぱり心配ではある。
「あの、旬先生。ずらせない約束なんでしょうか?」
「ああ、私から言い出した約束だから、ずらしたくない」
やっぱり、大きなお世話だったみたい。
「わかりました。16時50分に戻ります」
「ああ、頼む」
そう言うと旬先生は、ようやくソファに身を沈めた。
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