案件1、24時間以内に惚れてしまうという予言

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旬先生は、椅子からさっと立ち上がり扉の前に立たされている私のところまで歩いてきた。 平凡な私の顔をじっくりと眺めて、指先で私の顎を掴んで持ち上げる。 六本木の綺麗なオフィス内でイケメン弁護士に顎クイされる私。 コレは、あまりにも貴重な体験ではあるが、出来ることならご遠慮したい。 「キミなんて、おそらく24時間ともたないだろうな」 「な、 何がですか?」 「キミが俺に惚れる時間だよ」 「キミが惚れる? 」 私の疑問に、旬先生は当たり前みたいに頷いた。 惚れるとかいう言葉を、よくもまあ恥ずかしくなく使えるものだ。いくらイケメンとはいえ、呆れるほどビックリした。 第一『惚れる』なんて言葉を日常で使う人を初めて生でみた。貴重な体験が次々と起こり、より頭痛がひどくなってきた。 徐々に旬先生の顔が異常に近づいてきて、私の瞳を覗き込んでくる。 想定外のイケメンドアップに小さな胸は破裂して、粉々になりそうなくらいに危険な状態になっていた。 「近いっ、近いですよ!」 「わざとしている」 「わざと?!」 「もう、惚れたのか? まだ10分も経ってないぞ」 うわっ、出たよ。 イケメンだと自覚している上に自信たっぷりなセリフだ。これが世に聞く俺様キャラ? 確かに私の心臓も頭もドクンドクンと脈うっている。でも別に惚れたからとかじゃない……と思う。 単にイケメンに対する免疫力が少ないから、病気みたいに胸がギトギトしているだけだ。 いや、ギトギトじゃないドキドキだ。緊張し過ぎて言葉が反対になってしまった。普段なら、ありえない間違いだ。
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