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「あのぅ、旬先生」
食前酒をいただいた後で私は、気になっていたことを聞いてみることにした。
「何か?」
「潤先生がおっしゃってたんですが、あの旬先生には優れた能力があって、そのせいで今回倒れたと……」
「あのおしゃべり屋。もう、まだ続くかどうかもわからないパラリーガルのキミにそんなことまで言ったのか」
歓迎会だというのに旬先生に毒舌を吐かれて、主役であるはずの私はすっかり気分を概していた。
「続くかどうかって……一生懸命やりますから私」
じとっとした目で潤先生を見た時に、ギャルソンがやってきた。
「失礼致します。こちら本日のアミューズでございます」
四角い平皿に並べられたスプーン。そのスプーンに美しくひと口分ずつ盛り付けられた料理。
見たところで綺麗か綺麗で無いかは、判断できるが、どんな食材を使った料理なのかは良くわからない。
ただ、テンションは今朝同様に上がってきた。
料理に意識が集中していた私に旬先生は言った。
「君には謝らないとな」
「ぇっ?」
「迷惑かけたな、倒れたりして」
「いえ、全然。迷惑なんて思ってませんから」
旬先生は、少し口を横に開いた。
「……そうだな。エレベーターから運んだのは、君じゃないし、君にはかえって迷惑をこうむった。顔も服もかなり濡らされたんだったな」
「それは……」
わざとじゃないのに、よかれと思ってしたことなのに。何も今になってそんな言い方してこなくても……。
こんな意地悪な言い方されたら、一気にテンションも下がるし食欲もうせてくる。
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