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「前田麗子に明日詳しい話を聞けば君にもわかることだが、あえて君が混乱しないようにあらかじめ教えておこう」
静かにアミューズを完食した旬先生。旬先生の長い指を見ていた私も慌ててアミューズを一つ口に入れ、飲み込まないうちに二つ目を口に入れてしまった。
しまった。勿体無いことをした。
なんか緊張しずぎて、味わうことを忘れてしまった。
「…はぁ」
高級料理を味わえなかったショックから旬先生に生返事をして、今度はしっかり飲み込んでから三つ目のアミューズを口に入れてしっかり味わう。
あっ、なんか舌の上でとろける。
おいしい。なんだか食材はわからなかったけど。なんかすごく美味しかった。
とろけ落ちるほっぺたを掌で、押さえ次の料理が早く来ないかとソワソワして辺りを見回した。
「…前田麗子は、ストーカーでは無い」
料理が運ばれてくるのを待たずに、唐突に確信にみちた言い方で話してくる旬先生に面食らっていた。
「えっ? あの、どうしてわかるんですか?」
「今日、前田麗子に会ってわかった」
「あの、わかったって……ほんの数分会っただけですよね?話もロクにしてませんし」
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