案件4 雰囲気の良さに騙される

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椅子から立ち上がると、座っている旬先生まで行き、旬先生の腕を掴んだ。 「行きましょう、旬先生!」 旬先生の腕をぐいっと掴んで立ち上がらせる。 「どこへ」 「機会がないと行かないものなんでしょう?」 上ってみたかったのなら、上ればいい。したかったことを後悔して生きていくのは、不幸せだ。機会がないなら、作ればいい。 「は?」 渋々立ち上がった旬先生の腕を引っ張って、どんどん歩く。 「おい、待て」 「早く行きますよ。鉄は熱いうちに打て!ですよ。あとは、ん〜と思い立ったら吉日です」 少し歩いたところで反対に私は旬先生に引っ張られていた。 「落ち着け。まず、会計を済ませる。無銭飲食で捕まりたくないんだ。腕を離せ」 引っ張られたせいで、私は旬先生の胸の辺りまで接近した位置に立っていた。 「あっ、そうですよね。やだ、私……なんだかすいません。突っ走ってしまって」 慌てて旬先生の腕から手をパッと離す。 私ったら、何しようとしてるんだろ。 さっきの可愛いらしいハニカミ笑顔を吹き飛ばし、クールな表情で私を見おろす旬先生。眉間にしわを寄せている。 なんか怒ってるみたい。 それもそうか。 旬先生がたまたま呟いた言葉を鵜呑みにして、即行動に移した私はどうかしている。痛いレベルの女だ。 今日会ったばかりの人なのに。 どうして、どうにかしてあげたい気分になったりしたんだろ。 良く知らないし、本当は優しくなんかないのに。
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