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気分が良くありません。女性を馬鹿にした先生のセクハラな態度にムカついてます!
ときっぱり言って手を振り払えていたら、かなりカッコ良かった。
だが、今日は初日だし、なんせ就職したばかりだ。ここは我慢……する。
いや! だんじて我慢出来ない。
我慢したら、セクハラを許すことになる。そんなことは断じて許さない。
弁護士を目指しパラリーガルを何年も続けている私が、悪をはびこらせる真似は絶対に出来ないのだ!
顎を持ち上げている旬先生の手を叩いて払う。
「今の気分は、最悪です」
やってしまった。
もう、クビになるかもしれない。
旬先生は、至近距離で私と視線を合わせてくる。
「最悪? 」
「はい、せっかく六本木の綺麗なオフィスで働けるなんて夢みたいって…すごく嬉しかったのに。女だと女性蔑視され、名前にケチつけられた上に顎クイですよ。最悪以外の言葉が出てきません」
「……そこまでいうなら、私に惚れて仕事に支障をきたす真似は絶対にしないという確実な証拠を見せてくれ」
「証拠ですか?」
証拠か。
なるほど弁護士が使いそうなセリフを出してきた旬先生。
さて、何を証拠にすればいいだろう。
「さあ、証拠は?」
「そう言われても、あっ、そうだ!」
私ったら肝心な事を忘れていた。
「証拠ならあります。旬先生に惚れない証拠」
私はスマホをバッグから取り出して、画面をタップし、保存してある写真をスクロールして探し出した。
「コレです。私の彼氏です。もう、五年も付き合ってます」
スマホに映し出された和也の笑顔を見て、
「ん〜だから?」
興味がないみたいな返事をする旬先生。
「私には彼氏がいるので旬先生には惚れたりしません」
「そんなのは、関係ないよ。だってそうだろう? 結婚してても、違う人を好きになる人間がワンサカいる。世に言う不倫って奴だ。ひと昔前に流行ったよね? ゲス不倫だっけ? 他にも沢山報道されていた。キミの場合は、結婚も婚約もしてない。ただの古びた彼氏だ。今、顔も拝見したが、イケメンの部類には属さない彼氏がいたとしても、それが一体なんの効力を発揮するやら。なんの抑止力にもならない」
反対尋問でもするみたいに一気にしゃべり倒した旬先生は、ようやくひと息ついた。
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