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「内藤くん、キミは小さいが肩幅は立派だな」
タクシーを降りてから旬先生に言われた。
「は?」
確かに笑いを我慢していて肩に力を入れていたから肩が張っているように見えたのかもしれない。
慌てて肩の力を抜いてみる。
「これで大丈夫。……ちょっと旬先生、待ってくださいよ」
東京タワーへ向かい早足で歩いていく旬先生が足を止めた。
「内藤くん」
「はい?」
「これを見たまえ」
券売機の横に張られた張り紙を指さした旬先生。
「リニューアル工事…2019年夏頃までぇ〜え〜!!」
なんと、特別展望台とやらはリニューアル工事のために営業していないらしかった。
「どうやら私は特別展望台に縁が無いようだな」
この場合、旬先生の言葉に冷たいようだが頷きそうになった。ここは『そうですね』と、いう訳にもいかない。
「まさか、たまたまですし」
「たまたまの機会だった。きっと、そうそう東京タワーに来るという機会は訪れない」
ネガティヴだ。考え方がネガティヴになっている。
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