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案件5 上司と二人きりでいると変な雰囲気になる
大展望台に来て、見える夜景に感動していた。
「わぁ、宝石をばら撒いたみたい」
黄色やオレンジ、赤や白の街灯りが素直に綺麗だと思えた。
「なんだ?その感想。随分陳腐で使い古されたものだな」
窓の近くに走った私の隣にゆっくり来た旬先生は、馬鹿にした言い方で私を鼻で笑った。
「陳腐でもいいじゃないですか。じゃあ、旬先生の立派な感想を聞かせて下さい」
さぞかし、立派な感想が聞かせてもらえるんだろうと期待していた。
「賑やかなパーティーみたいだ」
「パーティーですか?」
「あぁ、一生懸命に誰かが飾り付けたパーティー会場みたいにみえる」
意外な答えだったが、そう言われるとパーティー会場みたいにみえなくもない。
「わたしの就職祝いパーティーでしょうか」
言ってから、すぐに後悔した。
自分の為のパーティーだなんてよく言えるなって馬鹿にされそうだ。
だけど、旬先生からは
「そうだな。そうかもしれない」
同意するような言葉が発せられた。
驚いて、旬先生を見上げる。
夜景を眺めていた旬先生が、私の方へ向いた。
あっ……。
驚いたことに旬先生の口角は少し上がっていた。
旬先生、笑ってる……。
その笑顔に少しだけ、ドキッとなった。
ドキッとした事をごまかすように私は夜景を眺めた。
「夜景を見て、それをパーティーに例えるなんて、旬先生には、よほどキラキラしたパーティーの思い出があるんでしょうね〜。いいなぁ。私なんか、家族お手製の折り紙で作った飾りでしたよ。キラキラしてたのって言ったら」
「……キラキラしたかどうかわからないが、バースデーパーティーなら思い出がある」
「どんな思い出ですか?キラキラな思い出 聞きたいです」
旬先生は、私をチラッと見た。
「だから、キラキラしてないって言ったはずだが」
明らかに不満げな表情だ。
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