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「内藤くん」
「は、はい」
「下へ降りよう。そんなラブラブめいたオブジェをパラリーガルのキミと見ても意味がないだろ」
「そ、そうですよね。確かに。私も旬先生と見ても仕方ないと思ってた所です」
先に階段の方へ歩き出した私の腕は、またもやガシッと旬先生に掴まれていた。
「仕方ないという言い方は、少しばかり私に失礼ではないか?内藤くん」
振り向いた私は、旬先生を見上げた。
「失礼なのは、旬先生が先ですよ。私と見ても意味がないって言ったんですから」
「そうだったかな」
「そうですよ」
「だとしたら、悪いのは私が先という訳だな。それは、すまない」
素直に頭を下げてきた旬先生。
「いえ、あの、謝って頂くほどのことではないので」
「そうなのか? どうも私は自分で気がつかないうちに人を傷つけるようなことを言ってしまうらしいんだ。音羽くんにも良く注意されてる」
旬先生は少し微笑した。
「先輩にですか」
「音羽くんのことを以前、良く傷つけてしまってね。だから、音羽くんは……」
言葉を切った旬先生は、改めてきらびやかなピンクに光るミニチュア東京タワーを眺めた。
「まあ、そんな話はキミに話すことではないな。それより」
私は腕をぐいっと旬先生の隣に引き寄せられた。
「今は内藤くんと試しにコレを見てみようじゃないか」
旬先生に習い2人で並んでミニチュア東京タワーをジッと見つめてみた。
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