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「恋人同士なら、ここでキスでもしたかな?」
私の目を覗くようにして聞いてくる旬先生。
ち、近い。
何故、こんなに寄ってくるわけ。
「し、知りませんよ」
少し旬先生から離れてみた。
すると、わざとなのか知らないが、また一歩近づいてくる旬先生。
「どうして。キミは彼氏と来たらどうしてたと思う?」
「さ、さぁ、キスはしないと思います。人前ですし」
「へぇ、人前とか場所を気にするのか。そういうのを気にするのは、恐ろしくつまらない発想だな」
「えっ、つまらないって…普通な考え方だと思いますが」
「そうかな? 私なら好きな相手と一緒にいたら、恐らく時間や場所は気にしない。いや、気にしたり出来ない」
「そんなの節操ない人間みたいで弁護士の品性にかけますよ。先生、そんな考え方はやめた方がいいですよ」
「パラリーガルのキミに指図されたくない。私は私なりの考え方があるし、もちろんある程度の分別はわきまえている」
いくらかムッとした様子の旬先生がかがんだ姿勢を元に戻した。
「……そうですか。失礼しました」
ムカつく。人のことは、つまらないだのと言っておきながら、自分のことは、とやかく言って欲しくないなんて。自分勝手な男だ。
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