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「だが、これだけ派手でハートが沢山の、いかにもデートスポットの象徴的なオブジェを前にして」
旬先生は、小さなため息まじりに私を見おろした。
その顔がなんとも言えず、物憂げな感じで私は不覚にも再びドキッとしてしまう。
「不思議なんだ」
旬先生の手が伸びてきて、私の頰に触れた。
じっと見つめてくる旬先生に私のハートがピンク色に染まりそうな気分になる。
何?
もしかして、旬先生ってばデートスポットにきて気分が上がり、私にも気持ちが向いてきちゃった感じ? うわっ! そんなの…どうしよう。
困るよ。一応彼氏持ちだし。
そりゃあ、若井さんに和也が浮気してるとか吹き込まれてはいても、やはり彼氏だ。だから、いくら旬先生がイケメン弁護士でもダメだ。進んじゃいけないのだ。
困ったような嬉しいような私の頰から手を離した旬先生。
「こんな有名なデートスポットに来ても内藤くんが相手だと、気持ち的に何にも起こらない。泡立たないな気持ちが」
「は?」
「女性とデートスポットに来たら、やはり緊張したりドキドキ感を味わうものだが。それが一切無い」
「それって…また結構私に対して失礼なんですけど」
今度こそは私がムッとする番だ。
「あれ、怒ってる?」
「怒りますよ。つまり、旬先生は私に女性的な魅力を感じないってそういうことですよね」
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