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「まあ、そうなるかな」
階段の方へ歩き出した旬先生。
「あの! わ、私だって同じですから。旬先生と東京タワーに来てもっ…」
息を吸い込んで旬先生の背中に向かう。
今度こそ、失礼な男に文句を言ってやるんだから!
「なんとも思わないっ…」
私が文句と息を同時に吐き出している途中で旬先生が振り向いて数歩大股で戻ってきた。
それで、ためらいもなく私にキスをしてきた。
あっという間くらいはあった…かもしれない。でも、私は文句を吐き出している途中だった。
その行動を中断させられ、旬先生と全く考えてもいなかったキスをしたのだ。
旬先生の唇が柔らかいとか、旬先生の鼻が高すぎるから私の頰に旬先生の鼻先が当たったとか。
そんな小さな? ことは、この際どうでもいい。
だが、パニックに陥った私の思考は、この大事件を飲みこめず完全になかった事にし時間を少しだけ巻き戻したようだ。その証拠に旬先生の唇が離れた後、私は何事もなかったみたいに文句の続きを連ねていたのだから。
「……んですからね。なんとも」
不思議そうな瞳をして私を眺める旬先生が、私の頭にポンと手をおき「やっぱり、内藤くんは小さいな」と納得したように呟いた。
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