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そうは言ってもドキドキしながら、気がついてしまった間接キスの行方を見守るべく旬先生の手元を見つめた。
手にしているカップが、あと数センチで唇につきそうだ。
あと、5ミリ位。
あと、1ミリ……うわっ、もう見ていられない。
思わずぎゅっと目を閉じていた。
「内藤くん、どうかしたのか? 高いところにいすぎて気分でも悪いとか?」
「へ?!」
慌てて目を開けてみると、すぐ近くに旬先生の顔が見えた。
「わっ! 近い近いっ」のけぞった私は、椅子ごと倒れそうになってしまう。
「あっ」
声を上げた私の背中に腕を回して、倒れないように支えてくれた旬先生。
とても俊敏だ。
旬先生の顔を見ながら、その動きの速さに感心していた。
「内藤くん、慌ただしくてキミと一緒だと落ち着いてコーヒーも飲めないんだが。わざとか?」
私の体を起こしながら、旬先生がブツクサと嫌味を言ってきた。
「わざとの訳がないですよ。私も慌ただしくしたくてしてる訳ではありません。これにはちゃんとした理由が」
「ほお、どんな理由があるんだ?」
興味津々というように瞳を悪戯っぽく輝かせる旬先生。
こんな表情もするんだぁ。
キラキラした瞳は、なんだか凄く……。
私は、その先に浮かんだ危険な言葉を大量に溜まった唾と一緒にゴクリと飲み込んだ。
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