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だから、私は既に動揺していた。
「意味はある。キミが私を意識しているという証拠になる」
旬先生は、スプーンでアイスをすくった。旬先生の口が開いてスプーンが口の中に入っていく。
…ダメだ。
私は、瞼をぎゅっと閉じていた。
とても見ていられる状態じゃない。恥ずかしすぎる。間接キスを今からすると言われて、いざ本当に目にする状況はかなり恥ずかしいものだ。
「内藤くん」
急いで目を開ける。恥ずかしい状況は、とっくに終わったと思ったから。
それなのに、スプーンには、まだアイスが乗っていた。
どうして? まだ食べてないの? と思う暇もなく旬先生が自分の口へスプーンをパクリと入れた。
「ぅ……」
小さく呻くことしか出来なかった。
さっきのキスと同じだ。
突然の出来事を避けられずに私は受け取るしかなかった。
私は、旬先生が返してくれたスプーンを手にして呆然とするしかなかった。
でも、どうしてだろう。旬先生を見ていると、胸がざわざわしてくる。
この人は、身勝手で……。
ここで、さっき言葉に出来なかった危険な言葉を再び思い出していた。
旬先生は、少しだけ微笑んで何事も無かったみたいに夜景を眺め始める。
その横顔は、問題なく彫刻みたいに綺麗だ。
……この人は、身勝手で変わり者だけど……なんだか、相当カッコ良くて……。
なんか……好きだ。
私は、今朝旬先生に言われた事をまた思い出していた。
『キミなんておそらく24時間と持たないだろうな』
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