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案件6、依頼人の利益とオーラ
翌日は、そわそわしていた私の気持ちを知ってかなかなかオフィスに現れない旬先生。
結局、私は昨日出会ったばかりのイケメン弁護士の旬先生にキスされ、間接キスもした。それなのに、どうしてキスしたのか旬先生に聞く事も出来ずに「お疲れさま」と言われて駅前で別れた。
どうして、旬先生は私にキスなんかしたんだろう。雰囲気に流されたのだろうか? それとも相当なタラシ。
どんな顔して挨拶しよう。
ふつうにしてればいいはずだ。むしろ、緊張するべきなのは旬先生の方だ。私はされた方で、した方じゃない。理由を問われるべきなのは、どう考えても旬先生の方だ。
私があたふたしてデスクを拭いたりしている時に、扉が開いた。
「お!おはようございます」
「…おはよう」
問題の旬先生は、今日の空みたいに爽やかだ。
私は昨日良く眠れなかったというのに、目の下にクマがあるでもないし、目が腫れているということもなし。
「内藤くん、凄いクマだな。目も腫れぼったい」
「そ、そんなこと無いですよ〜ははっ」
「そうだな。たった1日2日の付き合いで元がどんな顔か良く知らないのに失礼したな。腫れて無いのに誤解して申し訳ない」
「えっ…」
今更、腫れてますよ。貴方のせいで腫れたんですよと言える気がしなくなってきた。
それでも、昨日のキスについては聞いておきたい。そう思って口を開きかけた時に旬先生が後ろを振り返って開けた扉を押さえた。
「さあ、どうぞ」
入ってきたのは、セントラルガーデンクリニックの内科医、前田麗子さんだった。
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