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エレベーターで2階へ行き、まずはシアトルコーヒーのカフェを眺めた。
コーヒーの芳しい香りが辺りに充満している。
非常に良い香りだ。
普通の男性ならば、きっとコーヒーが好きなはず。大抵の男はコーヒーが好きだ。
だが、相手は普通ではない面倒くさい男だ。
もしかしたら『お抹茶が好きで』とか言い出し、懐から懐紙を出してこないとも限らない。
なきにしもあらず。
カフェとコンビニの2つを交互に眺めて、唸りながら掌を自分の頰にあて立ち尽くしていた。
とりあえず、こんな時は、まず現物を見てみよう。
コンビニへ入り「いらっしゃいませ」の声をうけながら、キョロキョロとドリンクコーナーを探す。
あった、あった。
カップに入ってストローを刺して飲むタイプの抹茶ラテ。そして、下の段に同じタイプのフレッシュオレンジジュース。
どちらも……
両方手に取りパッケージを眺めた。
どちらも美味しそうだ。
うんうんと頷きながら、首を傾げた。
はて、旬先生は「今、私が欲しているものを買ってきてください」と言っていた。
普通の男性思考ならシアトルコーヒー。
だが、あえて買い物させる試験だ。そんなに甘い訳がない。
とすれば、抹茶ラテかフレッシュオレンジジュース。
今は、まだ午前中だ。
となると仮に、今朝はちゃんと食べられなかった。少しは、栄養のあるものを取りたいなぁ、そう考えた場合は……
断然フレッシュオレンジジュースだ。
私は、フレッシュオレンジジュースを持つ右手を上げた。
だが、今は冬。
冬は、風邪を引きやすい。そうだ、風邪予防の為にカテキンを取りたい。その場合は……
抹茶だ。
今度は、左手を上げた。
I have a 抹茶、I have a フレッシュオレンジジュース。
うん……
ますますわからない。
両方の手に持ったドリンクを見比べて、私はドリンクを持った右手と左手を交互に上げたり下げたり、途中唸ったりしていた。
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