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案件4 雰囲気の良さに騙される
言われた通りに16時50分に旬先生のプライベートオフィスの扉をノックした。
「はい、どうぞ」
「失礼します」
扉を開けると部屋には、明かりがついておりコートとビジネスバッグを手にした旬先生がこちらを向いた。
「さて、内藤くんもバッグとコートを持ちなさい。もう、ここには戻らないから」
「は、はい」
急いで中へ入り自分のデスクに行きバッグを手にして、ハンガーにかけていたコートを取った。
部屋の電気を消して、扉を出る旬先生。その後をちまちまとついて歩きながら、旬先生のシュッとした背中を見ていた。
このまま約束の場所にいくようだ。
私は帰っていいのだろうか?
エレベーターの前に来た時に聞いてみた。
「あのぅ、先生」
「何か?」
上へ行くボタンを押す旬先生。
「私は、もう帰ってもよろしいのでしょうか?」
すると、私の方へ顔を向けた旬先生が怪訝な表情を見せた。少し怒っているようでもある。
「よろしくない」
「えっ……あの、私も同行した方が?」
「同行した方が? 何を言ってるんだ。キミが来なけりゃ意味がないだろう」
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