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カイとノアと別れた後、僕は一人で空を飛んでいた。
カイの話によれば、あの声はどこか別の場所で話しているそうだ。
だから僕は飛んで探すことにした。高く飛べば、何処かで話している誰かに会えると思ったから。
それからどれくらい経っただろう。いろんな子にも聞いたけど、あの声はどこにも見つからなかった。
色んな所にも行った。ゴツゴツした岩山の上、真っ暗な洞窟の中、夜になると光る森の奥。珍しいもの、面白いもの、ちょっと怖いもの。色々あったけど、やっぱり「誰か」は居なかった。
そんな僕が今日行ったのが、島の中心近くの大きな建物。林の近くのイワクラさんが教えてくれた場所で、昔ヒトが作ったものだそうだ。
あちこちひび割れていてボロボロだが、ここに声の主がいるのだろうか。
若干疑問に思いながらも、僕は屋上に空いた穴から中に入って行った。
中には見たことのないものが散らばっていた。きっとヒトが作った「どうぐ」と言うものだろう。
誰かいませんか、と言ってみる。僕の声はわぁんと響いて広がるが、それだけだった。後には沈黙しか残らなかった。
もうすぐ夕暮れ。声が聞こえる頃だ。
突然ガガガッと音がした。驚いて飛び退く。何かいるのか? もしかして、スイカイとか言う怖い奴か?
慌てて辺りを見渡すが誰もいない。その代わりに、
「中央……ターが……午後五……を……す。間もな……トを閉…させ……の皆さ……ご注……さい。……明日も……なりますよ……」
あの声がした。掠れてざらついた、いまにも消えそうな声だった。
僕の前には丸い実のついた板やひび割れた板。キュルキュルという音と共に声が聞こえる。
結局、誰が話しているのかはわからなかった。建物の中を隅から隅まで探したけど、本当に誰もいなかったんだ。
そして、その日から。
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