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あれから何日経っただろう。
「中……ます。間……一部を…せ……フ………ん……は……」
僕は声の聞こえる木に来た。
切れ切れの言葉。今日はもう、これしか聞こえない。
声の主は見つからなかった。
カイのところに行った時、彼は一つの考えを聞かせてくれた。
「あの声の主は遠くに行ってしまって、今は声だけが残っている」。理屈はよくわからないが、声の主がヒトなら、そういうことができるらしい。
それが本当かどうかは、僕にもカイにもわからない。カイは最後に言った。
「後はあんたが好きなようにしろ。声の主を探してもいいし、諦めてもいい。ただな」
「後悔はするなよ」
だから僕は考えた。自分にできることを。消えていく声にしてあげられることを。
そして次の日の夕方。
声は聞こえなくなった。
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