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「ねえカイ」
「ん」
「聞こえるね。今日も」
「そうだな」
「……よかったのかな」
「あいつが自分で見つけたんだ。いいんだよ。あれで」
「そっか」
「……今日は行ってみるか。あいつの『声』を聞きにさ」
「うん! 」
残したかったのかな。伝えたかったのかな。
君は最後まで話し続けた。声が枯れるその日まで。
言えなくなったら終わりなんて寂しいよ。毎日言うほど大事だったんだろ? 届けたかったんだろ?
君のように綺麗な声じゃないけれど。
君のように遠くまで届く声じゃないけれど。
誰かが言えばきっと伝わる。君の声が戻るその日まで。
だからさ。それまでは……
「中央管理センターが、午後五時をお知らせします。間もなく、一部ゲートを閉鎖させて頂きます。スタッフの皆さん、生き物の皆さんはご注意ください。それでは、明日もよい日になりますように」
夕暮れ。空が真っ赤に染まる時間。
僕は君の言葉を紡ぎ続ける。
【 】声の話 終
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