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その時の僕には、なんて言っているのかはわからなかった。僕たちとはずいぶん違う声。少しざらついているけど、綺麗に響く声。
誰の声なんだろうって思って、僕は「島」に降りてみた。
海の上にいても聞こえるくらいだから、きっと大きな声なんだろう。もう一度聞こえないかなと思って、しばらく待ってみた。
でも、夜になっても声は聞こえなかった。
そのうち僕は眠ってしまったんだろう。気がついたらもう、次の日になっていた。
目が覚めたのは昼間だった。いつもならこんなに眠ることはないのに。
奇妙な気分になりながら立ち上がると、体が変な感じがした。まず驚いたのは翼がなくなっていたこと。
羽ばたいてみたけど、飛ぶことも浮かぶこともできない。羽毛は全部なくなって、代わりに長い棒みたいなものが生えている。先端は五本に分かれているけど、広げても飛べそうにない。
勢いが足りないのかと思って走ってみたけど、すぐに転んだ。足が前より長くなっていて、上手くバランスが取れなかったんだ。
何が起こったんだろう。僕はもう一度立ち上がって、自分の体を眺めた。
まず、体中の羽毛はなくなっている。代わりに白い皮が体を包み、足は桃色の何かに覆われていた。
顔を触ってみると、嘴がない。口は随分短くなったし、柔らかい。これじゃあ狩りもできそうにない。
僕は何になってしまったのだろう?どうして変わってしまったのだろう?
疑問は少しずつ不安に、そして恐怖に変わって行った。少なくとも、僕は二度と飛ぶことはできない。元々苦手だったけど、いつかは上手くなると思っていた。なのに望みは絶たれてしまった。
僕は呻いた。自分の体が憎かった。自分が怖かった。
だから思い切り叫んだ。ごちゃ混ぜの心を吐き出した。そうすることしか、今の僕にはできなかったんだ。
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