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その時、後ろから誰かの声がした。
振り向くと、二匹の生き物がこちらに来る。どちらも二本の足で立ち、背中がまっすぐ伸びている。あれは確か、ヒトって生き物だ。大きい方はオスで、小さい方はメスかな。
ヒトと僕たちは話せない。特に危険な生き物ではないけど、体が大きいからちょっと怖い。
近くに来る前に飛んで離れようと思ったけど、今の僕は飛べないことを思い出す。
仕方ないので歩いて行こうとすると、待って待ってと呼ばれた。
あれ、どうして僕、ヒトの言葉がわかるんだろう?
ふと疑問が生まれて足が止まる。すると小さい方のヒトが走ってきて、僕の背中をぽんと叩いた。
急に触れられてびくっとしたその瞬間、僕の背中から翼が生えた。
ひゃっという声がして振り向くと、小さいヒトがひっくり返っていた。遅れてきた大きい方のヒトが、何やってんだと言いながら彼女を起こす。
僕は突然生えた自分の翼に驚きつつ、新たな疑問を抱いていた。
どうして僕は、ヒトと変わらない目線で立っているんだろう?
大きい方はヒトのカイ、小さい方はハンドウイルカのノアと名乗った。
どういうことかと聞くと、二匹はこの「島」で起こる現象について説明してくれた。
まとめると、この「島」では時々「光」が濃くなり、それを浴びた生き物はヒトの姿に変わる、とのことだった。
なんとも不思議なことだが、おそらく僕に起こったのもそれだろう。
カイによると、背中の翼を動かせば飛べるそうだ。
早速動かしてみると、体がふわりと浮いた。翼を大きく広げて風に乗る。僕は波の上を滑るように飛んだ。相変わらず、あまり上手な飛び方ではなかったけれど。
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