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話すことを何も思いつかないまま、時間だけが過ぎて行く。
ノアは私も聞きたいとか言っていたのに、モンシロチョウを追いかけて何処かに言ってしまった。そんなわけで、カイと二人きりだ。
正直言って気まずい。カイは僕のことをちらりと見もしない。僕の都合に無理やり付き合わせてしまったから、怒っているのだろうか?
「ごめんね」
僕は声をかけてみた。カイは何も言わない。
「どこかに行く途中だったよね。僕が引き止めちゃったかな」
やっぱり何も言わない。
「急いでるなら、大丈夫だよ?ここまで来たら僕一人でも……」
「気にすんな」
カイがこっちを向いた。
「別に予定はねぇよ。うちに帰るところだったしな」
「うち? 」
「ああ悪い、知らないよな。巣って言えばわかるか? 」
それならわかる。
「ノアがあんたと居たいって言うなら、付き合うさ。あんだけ言ってもあいつがやりたいって決めたことは、大抵面白いことだからな」
カイは笑った。よく見ないと気がつかないような、静かな笑みだった。
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