闇の少女

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 「違う"わたしは何もしてない"なのにどうしてわたしばかりを殺そうとするの?」  怯える少女の瞳には、酷く戦慄する賞金稼ぎの姿が映りこんでいる。まるでこの世のものではない何かを見たかのようにガチガチと肩を震わせ、腰を抜かしている。  「お前の後ろにいる、その化けものは何なんだよ。仲間はみんな、そいつに食われたんだぞっ!」  賞金稼ぎの男は少女の背後にある、石の壁からこちらを見ている人の顔のような図形を指さした。 思い出すだけで恐ろしい光景だった。その奇っ怪な図形は少女の影の如く忍びよってくるや、足元から仲間の集金稼ぎたちを食べたのだ。刀剣や弓矢を当てても傷一つ付かず、魔法を放ってもびくりともしない。そんなかかお文字の怪物が仲間たちの頭を跳ね、腕や脚を食い破っていったのだ。 セレブリティアが一億の懸賞金をかけるのも頷ける。  「わたしが出したくて出したんじゃないのに!」  「俺はもういやだ。この仕事から下ろして貰うぞ。うわああん!」  賞金稼ぎの男は、へっぴり腰で祠から逃げようと駆け出した。反応したかお文字の怪物は賞金稼ぎの足元に滑るように急接近すると、足首にかじりつき、そのままばくりと頬張ってしまう。  「やめてよ、なんでそんなことをするのよ。あんたのせいよ、私の前から消えてよ」
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