泣き虫ママとバケツ

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泣き虫ママとバケツ

泣き虫ママとバケツ 長いこと寝てたみたいだよ あ~ ここはどこかな? あれ? なんかしたの方に街が見えるよ ん? おや? あれ? 僕はどうしちゃったんだろう 「あなたは、もうおそら応援団に入ったのよ」 振り返ると、カラスの女の子がそう言った お空応援団 聞いたことがあるぞ 魂だけになったら入る応援団のことだ ということは、僕はもうおそらの子になっちゃったのか いやいや、まてよ!僕はまだ、家族にお別れも言ってないじゃないか すると、カラスはこう言った 「お別れの言葉なんて、みんなが言えるわけじゃないわよ。でも、見に行きたかったら見るだけなら出来るわよ」 僕はその言葉を聞いて、一目散に家まで戻ったんだ 小高い丘にある僕の家には、 優しいお母さん お兄ちゃん、 時々いろんな人 とにかく、とっても暖かい家さ 庭に着くと、野良猫が 「なんだ、おまえ?どこの野良猫だよ」 と聞くので 「僕はここの家の猫だよ」 と答えると そのノラは大笑いをしながら どうみたって野良猫じゃないかと言う 僕が野良猫? あれ?そうだったのかな 僕の家族は? いろんなことを記憶の引き出しから持ち出すと お母さんの記憶は沢山出てくるけど 家族としての思い出って 奥さん猫のことや、子供のことばかり思い出す 友達の猫達 弱ってる猫達を助けたこと 僕の家は? 記憶がはっきりしてくると 僕は確かに野良猫だったよ そして、新参者の野良猫たちにご飯をくれる人を教えてあげたり 怪我をしてる猫を守ったり そして奥さんと子供もいたな。 じゃあ、 僕の家ってなんだろう? なまえは? なまえがあったはずなんだ 曖昧な気持ちのまま、 庭の近くに行くと お母さん!あれは確かにお母さん 僕がお母さんと呼んでいた人だ 記憶が蘇ると、一気にいろんなことを思い出したよ この家のお母さんは、おうちに入る前に いつも、とても疲れた時があって 心配になった僕が声をかけたらご飯をくれたんだっけ その日から僕はお母さんが心配で庭のバケツに入って毎日そばにいたんだっけ お母さんは僕に名前をつけてくれたんだっけ なまえ そう! バケツだ! バケツなんて失礼な!と思ったけど 僕には名前があったんだ 、野良だけど名前を持ったのらだったんだ、 みんなみんな思い出したよ だけど 突然体の具合が悪くなって僕はしばらく休むことにして そして 気がついたらお空応援団というわけか お母さんは、悲しんだのかな 見るとバケツの中を覗いてる 「バケツ、どこいったの?」 それを聞いて胸がキュンと痛くなった 「僕はここだよ」と、言いたかったけど、お母さんには聞こえない お母さんは泣き虫なんだ いつも、辛い時に泣いている 僕はそれを見つめながら、 元気になってとパワーを送ってみたりしてね 泣き虫お母さんを1人にして僕はほんとに心が痛んだよ ごめんね、でも、これからは時々見に来るよ そう心の中で伝えるのが精一杯だった 「お~い」 ん? なんだろ、声が聞こえるぞ 上を見ると家の窓から犬が声をかけてるじゃないか 「お前が来るのを待ってたよ」 「僕は今ここで、君の大好きなお母さんを守ってるから心配するなよ」 黒白の犬がそう伝えてくれた 「うまいこと、この家に潜り込むのは大変だったんだぞ、感謝しろよ」 だってさ それを聞いて、なんだか、こんどは、クスッと笑ってしまった きっと、 僕の「想い」を受け継いで、神様が守り神のように、彼を送り込んだに違いない それは お母さんが泣き虫だから お母さんが心配だから そして お母さんが大好きだったから きっときっと、 そうやって、毎日バケツに顔を突っ込んで僕のことを探し続けるんだろうな ありがとう 僕はここだよ 返事の代わりに庭の葉っぱを揺らしてみたけど、 お母さんにはわからない わからなくてもいいんだ。 相変わらず泣き虫かもしれないけど、 きっと、みんなが助けて守ってくれるんだね。 あ!そういえば、今日は、人間の母の日だ。 「おかあさん、ありがとう」 こっそり呟いてみた。 お母さんに貰ったいろんなものが沢山あるけど、とびきりのプレゼントは たしかに僕がそこにいて 大事な名前を貰ったこと。 「バケツ」は、僕の大事な名前 野良なのに名前を持ってるなんて 僕は特別な猫なんだ! おそらに帰ってみんなに自慢してくるね! おわり 龍翔琉
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