わたしの愛は

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 密着していた肌が離れ、触れた空気が美夕の溺れていた心を呼び醒ました。 まだナカに感じる滉の、悦楽の呼び水を懸命に堰き止めながら美夕は滉を見つめた。 「わたしは、小さな時から滉君の背中を見て来たんだと思う」 「俺の、背中……?」  滉は美夕の潤む澄んだ黒い瞳を見、怪訝な表情を浮かべた。 美夕は、頷く。 「そう、背中。幼い頃、滉君がわたしに見せてくれていたのはいつも、背中だった。楊君はすぐに仲良くしてくれたけれど、滉君はなかなかわたしを見てくれなくて。わたしはいっつも滉君の背中を見ていた気がするの」  ああ……、と滉は、シャイだったゆえに初めて会った愛らしい幼い少女を正面から見られなかった自分を思い出していた。
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