わたしの愛は

6/8
前へ
/49ページ
次へ
 楊が直ぐに仲良くなったせいもあり、滉は美夕を余計に遠ざけた。 この家で、自分が優しくしなくとも大丈夫だろうと思ったから。 しかし、美夕は。 「でも」  美夕は、滉の目を真っ直ぐに見つめたまま静かに言葉を継ぐ。 「わたしは、滉君の背中を見ていただけじゃなくて、必死に追いかけていた気がするの。どうしても、滉君を正面から見たかったんだと思う」  幼かった美夕は、滉が作ろうとしていた壁を容易く乗り越え、入って来た。 ただ、滉自身、無意識にそれを望み、わざと低い壁を作っていたのかもしれなかった。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

232人が本棚に入れています
本棚に追加