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楊が直ぐに仲良くなったせいもあり、滉は美夕を余計に遠ざけた。
この家で、自分が優しくしなくとも大丈夫だろうと思ったから。
しかし、美夕は。
「でも」
美夕は、滉の目を真っ直ぐに見つめたまま静かに言葉を継ぐ。
「わたしは、滉君の背中を見ていただけじゃなくて、必死に追いかけていた気がするの。どうしても、滉君を正面から見たかったんだと思う」
幼かった美夕は、滉が作ろうとしていた壁を容易く乗り越え、入って来た。
ただ、滉自身、無意識にそれを望み、わざと低い壁を作っていたのかもしれなかった。
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