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素直じゃなくてぶっきらぼう。
けれど、強くて、逞しくて、芯に温かいものを持つ人。
「追いかけていた幼かったわたしは、純粋に、お兄ちゃんを求めて追いかける子どもだった」
苦しげに目を伏せた滉を、美夕は逃げずに見つめ続ける。
逃げてはいけない。
美夕は、覚悟を決めて滉と向き合う。
滉が、どんな行為に出ようとも、自分は逃げない。
受け止める。
それが、わたしの誠意。
「わたしは、滉君が好きだよ。でも滉君へのわたしの愛は、純粋な、お兄ちゃんへの愛だったの」
わたしの、紛れもない異性への深愛は、やはりあの人だけのもの。
美夕の中にはっきりと浮かぶあの人の姿。
姿を想うだけで、名前が脳裏を過ぎるだけで、胸が締め付けられる。
『美夕ーー』
甘く柔らかな呼び声を耳朶に蘇らせるだけで、痺れてしまう。
楊君、わたしはあなたを愛してます。
でもーー。
愛の言葉をはっきりと胸に刻んだ美夕だったが、今、一つの過酷な決断をしようとしていた。
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