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「日本を発つまで三浦さんのところにお世話になるね」
「美夕……」
タクシーのドアが開き、近付こうとした滉に美夕は言い放つ。
「来ないで」
強引な滉を止める強さを持った声だった。
数メートル離れた場所でどうする事も出来ず立つ滉に美夕は、柔らかに言った。
「ありがとう滉君。さよなら」
それだけ言い、美夕はタクシーに乗り込んだ。
ドアが閉まり、手短かに行先を告げるとタクシーは発進した。
美夕は振り向かず、シートに埋もれポロポロと涙を零した。
楊への言葉は敢えて残さなかった。
滉への想いを、綺麗に清算できなかったから。
「苦しい……」
小さく小さく呟いた美夕は、そっと目を閉じた。
楊君。
元気になってね、絶対に。
以前の楊君に戻りますように。
楊君、愛してます。
さようならーー。
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