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――その後、彼も本気で勉強をするようになり、僕も僕で勉強を進めた。 そして一週間はあっという間に過ぎて、試験最終日に彼から声をかけられた。 それは図書室に本を返しに行った帰り、アキちゃんも一緒だったせいで…。  バチバチっ! 火花が間近で見られるという、体験を僕はした。 …思っていたことだけど、やっぱりこの二人、相性が悪い。 「…麻野、ちょっと話があるんだけど」 と、彼は睨み付けるように僕を見ながら声をかけてきた。 「ああ、うん…。アキちゃん、悪いけど先に帰ってて?」 「…大丈夫か?」 アキちゃんはアキちゃんで、心配そうな顔で僕を見る。 「うん、まあ大丈夫…だと思う」 自信はなかったけど、それでも僕はアキちゃんから離れ、彼の元へ行く。 「ふんっ! 行こうぜ」 彼は僕の手を掴み、早足で歩き出す。 「わっわっ!」 僕は彼に引っ張られながら、校舎の裏側に来た。 …何かこの場所、懐かしいな。 「あの…さ、勉強教えてくれてありがとう」 彼は手を離さないまま、振り返って言った。 その顔は照れているように見える。 「テスト、結構書けたんだ。多分、赤点は取らないと思う」 「そうなんだ。良かった」 まだ結果は出ていないけど、本人が手応えを感じているのならば、きっと大丈夫。 「…でさ、明日から三日間、試験休みに入るだろう?」 「うん」 明日は金曜で、土・日をはさむから三日連休になる。 「三日間のうち、一日…ボクに付き合ってくれないか?」 「ん? どこに?」 「どっかっ!」 急に彼はキレ気味に叫ぶ。 …『どっか』と言われても…僕と彼の遊び場は全く違う。 「…ちなみにさ、龍雅くんがいつも遊んでいる場所ってどこ?」 「ボク? ボクはカラオケとかボーリングとか、クラブとかかなぁ?」 …カラオケなら僕も友達と行くけど、もっぱら歌うのはアニソンかゲームの歌ばっかりだしな。 「でも麻野は運動神経、良いんだろう?」 「ボーリングはまあ…でもクラブは行ったことない……と言うか、苦手って言うか」 「じゃあお前がいつも行く場所は?」 「うっ!」 切り返された…。 「僕はその…本屋とかゲーセンかなぁ?」 思いっきり彼から視線をそらしながら、ぼそぼそと言う。 …本当はアニメイトとかゲームソフトの販売店ばっかりだけど……それを言うと、また『気持ち悪い』って言われそうだったから、言葉を変える。 「ん~、本屋ってあんまり興味ないしなぁ…。あっ、映画は?」 …アニメや、原作がゲームとかマンガのだったら興味はあるけど。 「ふぁっファンタジーものなら…」 でもやっぱり変える。 「ああ、外国のか。ボクは見ていてすかっとするアクションものしか見ないしな」 …とことん合わない、僕達。 何だか泣けてくるなぁ。 「じゃあショッピングモールは? あそこならいろいろあるだろう?」 なっ何も無理に行かなくてもいいと思うけど……彼、意地になっちゃっているし。 「うん…分かった。そこで良いよ」 「よしっ! じゃあいつ空いてる?」 「明日なら大丈夫かな」 「それじゃあ明日、駅の前で待ち合わせな。ショッピングモールも駅の隣で良いだろう?」 「うん…」 「じゃあ決まりな!」 彼は嬉しそうに笑う。 眩しい笑顔なんだけど…。 「あの…いつまで手を……」 恐る恐る持ち上げると、彼はハッとしたように、手を振り払った。 「わっ忘れてただけだからな!」 「うん…。それじゃあ明日、十一時に駅前でね」 「あっああ! 忘れるなよ!」 顔を真っ赤に染めた彼は、そのまま走り去った。 何と言うか…可愛らしい反応だなぁ。 でも彼と明日、お出かけか。 嬉しいんだけど……話し、合うかな? そもそも間が持つだろうか? いろいろ不安があるけれど、一日だけと自分に言い聞かせる。 …そう、これで多分、おしまいだ。
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