第2章 羨望と嫉妬

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 思えば、入院したての頃は、毎日誰かが私を訪ねてきたものだ。特に仲の良かったクラスメイトの芽郁(めい)は、殆ど毎日のように学校が終わると私の病室にやってきて、その日の授業のノートのコビーを私にくれていた。だけど、そんな芽郁も、だんだんと来る回数が減っていき、もう二ヶ月は姿を見せていない。  文芸部の仲間も、最初のうちは私の所に訪ねてきて、部誌に乗せる原稿を預かっていってくれていた。私は部誌で小説の連載をしている。いや、連載をしていたという方が正しいのかもしれない。なにせ、三ヶ月前を最後に、誰も原稿を取りに来てくれていない。いま、私の小説が部誌の中でどのような状態になっているのかはわからない。おそらく、もうみんな忘れ去っているに違いない。それでも私は原稿を書き続けている。いつか、誰かが原稿を取りに来てくれたときにはすぐに渡せるように。  そういえば、景子のところに友達が来たのを見たこともない。景子の性格からすると、学校ではそれなりに友達がいたに違いない。景子の家や学校は、決して病院から遠いわけではない。だから、見舞いに来ようと思えば、簡単に来られるはずだ。それでも誰も来ないところを見ると、おそらく、私と同じように、だんだんと誰も来なくなっていったのだろう。  もしかすると、私が入院した当初は、景子も今の私と同じような気持ちでいたのかもしれない。優美にしても同じだ。優美の場合、県外から入院しているものだから、友達が簡単にお見舞いに来ることもできない。だから、私の所に友達が来るのを見て、つらい思いをさせてしまったかもしれない。  もしそうだとすると、ひどく申し訳ないことをしたような気がする。だけど、今更それをどうすることもできないし、謝ったところで何にもならない。今の私にできることは、せめて由紀恵に嫌な想いをさせないことくらいだ。  図書室に行ってみたけど、そこに景子と優美の姿はなかった。私はどうするか少し悩んだけれど、一応、談話室の方も覗いてみることにした。一人で本を読んでもいいけど、どちらかというと景子と優美と一緒に話がしていたい。そう思いながら談話室まで行き、中を覗いてみると、そこに景子と優美の姿があった。二人はテーブルを挟んで、ジュースを飲みながら話をしている。  
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