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七時を過ぎた頃、景子と優美がモソモソと起き上がった。やがて、朝食が運ばれてきて、私たちはそれを黙ったまま食べてゆく。確かに、計画がバレないように余計なことを言うのは控えようという約束はしていたけど、ここまで黙りこくっていると逆に不自然だ。
「優美ちゃん、小説の調子はどう?」
私は食事を進める手を止めて尋ねた。
「うん、もう少しで出来上がりそう」
「そっか。毎日頑張って書いてるもんね」
私の言葉に、優美は頷いた。優美はどこか緊張しているように見える。やはり、変なことを喋って計画がバレてしまってはまずいという想いが強いのだろう。これ以上、優美に話しかけるのは酷なのかもしれない。
景子も話しかけられたくないという雰囲気を全面に出している。私は諦めて、再び箸を動かし始めた。
食事を終えてからも、私たちの部屋の中には会話が生まれない。それぞれがそれぞれに緊張してしまっている。もしもバレてしまったらどうしようという不安は私にもある。そうすると、どうしても言葉を発しづらくなる。
朝の時間帯は病院スタッフの出入りも多いから、下手に動くとバレてしまうかもしれない。だから、私たちは九時半を過ぎた頃に病院から脱走する予定にしている。
何もせずにじっとしていると、時間が過ぎていくのがやたらと遅く感じる。せめて、何かをしながら時間を潰そうと、私はノートを取り出して、新しい小説のプロットを立て始めた。だけど、緊張しているせいか、なかなかいい案が浮かんでこない。小説の最初の一文に悩んでいた優美と同じように、私は何度もノートに文字を書いては消してゆく。
「琴美さん、どうしたの?」
そんな私の様子を見て、優美が話しかけてきた。
「新しい小説のプロットを立てようと思ったんだけど、なかなかいい考えが浮かばなくてさ」
私は頭をポリポリと掻きながら答える。
「プロットって何?」
「小説のあらすじのことよ。小説の設計図とでも言ったらいいのかな」
「へえ、小説っていきなり書き始めるんじゃないんだ……」
「頭の中にちゃんと設計図があればそれでいいのよ。私の場合、それだと忘れちゃうから、きちんとノートにまとめておくの」
「そうなんだ。じゃあ、次の小説を書くときには、私もまずはプロットを立ててみよう。琴美さん、また、プロットの立て方を教えてね」
「いいわよ」
私は笑顔で答えた。
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